「あの資料、どこでしたっけ」。同じ質問が、週に何度もチャットに流れる。答えを知っているのは決まった一人。共有ドライブを開けば、似た名前のファイルが5つ並ぶ。どれが最新かは、作った本人にしか分かりません。
ナレッジ共有ツールをAI前提で選び直そうとして止まるのは、たいてい次の3点です。
- 製品名は聞いたことがあっても、料金体系がばらばらで横並びの表にできない
- マニュアル作成ツールとの違いが曖昧で、どちらを稟議に上げるべきか決まらない
- 以前に情報共有ツールを入れて使われなくなった記憶があり、上長を説得しきれない
この記事では、料金は各社の公式サイトに書かれた数字だけを使い、次のことに答えます。推定額や第三者の比較サイトの数字は使いません。
- マニュアル作成ツールとの役割の違い
- 主要12製品の料金と、無料で使える範囲
- 稟議で説明できる比較軸5つと、絞り込みのゴール
- 製品を買わずに内製した場合の構成と、AI費用を止める上限の決め方
Saix自身、社内マニュアル67本を社内ポータル「Saixマニュアルブック」に集約し、社員がAIヘルプデスクに質問して答えと出典にたどり着く運用をしています。
製品を契約せず内製した側の立場から、カタログの比較よりも、入れた後に回るかどうかを軸に書きます。料金は12製品の公式サイトを1件ずつ開いて確認し、公開されていない製品は要問い合わせとそのまま記載しました。
ナレッジ共有ツールの選定で先に効くのは、AIの賢さでも料金の安さでもありません。AIの回答に出典が出るか、そして誰が書いて誰が直すかが決まっているか。
この2つが欠けた状態でどの製品を入れても、3か月後には検索されないフォルダがもう1つ増えます。
マニュアルを「作る側」の製品を先に見比べたい方は、次の記事が参考になります。

監修者
株式会社Saix 代表取締役
東証プライム上場企業含む100社以上のAI導入支援|リクルートでのAI推進・新卒マニュアル制作経験を経て、Webサイト「AIマニュアル研究所」を運営|YouTubeメディア「かいちのAI大学」4.8万人。
ナレッジ共有ツールとマニュアル作成ツールは役割が違う

結論から言えば、ナレッジ共有ツールは「貯めて探す」ための道具です。マニュアル作成ツールは「作る」ための道具で、守備範囲が重なりません。
マニュアル作成ツールが引き受けるのは、操作画面の録画や動画から手順を起こし、決まった書式へ流し込むところ。
ナレッジ共有ツールが引き受けるのは、議事録・商談メモ・トラブル対応の記録・過去の見積の根拠といった、書式のそろわない断片を1か所に集め、後から引ける状態にすることです。
前者は完成品を量産する道具、後者は未完成のまま置ける道具。求められる書き味が正反対です。
この2つを1製品で兼ねると、手順書は書式が崩れ、日々のメモは投稿の敷居が上がって集まりません。最初に決めるのは製品名ではなく、社内で「作る場所」と「貯める場所」を分けるかどうかです。
作る側の手順は社内マニュアルをAIで作る方法で扱っているため、この記事では貯める側だけを見ます。以降に出す製品は、すべて貯めて探す側の製品です。
AIナレッジ共有ツールは3タイプに分かれる

各社の公式サイトを1件ずつ開いて機能の並びを見ていくと、AIをうたう製品は3つの型に分かれます。どの型かで、導入後に最初に起きることが変わります。
- 社内wiki型(書いて貯める)文章を書いて蓄えることが主で、AIは要約・タグ付け・下書き補助として後から乗る。手を動かす人が社内にいれば最短で立ち上がる。
- AI検索型(貯まったものを引き出す)すでにある文書やファイルに自然な言葉で質問し、要約された答えを受け取る。既存の資産が多いほど効く。
- 汎用ワークスペース型(何でも置ける)文書もタスクもデータベースも1か所に置ける。自由度が高い分、置き方を決めずに配ると各人の書式で散らかる。
順番を間違えると空振りします。AI検索型は、社内に読める文章がある会社でしか効きません。紙とホワイトボードで回してきた会社がAI検索型から入ると、AIは答える材料を持たないまま「該当する資料が見つかりません」を返し続けます。
Saixの社内では、AIが読むのは公開中のマニュアル全件を圧縮したダイジェストで、ベクトルデータベースを使っていません。これが成立しているのは、先に67本という読める文章の束があるからです。器の話より、器に入れる中身が先に来ます。
主要ツールの比較|料金を公式に公開しているのは12製品中8製品

12製品の公式サイトを1件ずつ確認したところ、金額を明記していたのは8製品でした。残る4製品は「要問い合わせ」で、人数や規模を伝えないと数字が出ません。第三者の比較サイトの数字は、公式に確認できないものが混ざるため使いません。
12製品の料金一覧(公式表記)
| 製品 | 型 | 料金(公式表記) | 無料で使える範囲 | 見るべきポイント |
|---|---|---|---|---|
| NotePM | 社内wiki型 | プラン8(編集8名・閲覧24名)月4,800円(税込)〜/初期費用0円 | 30日間の無料トライアル | 編集者と閲覧者を分けて数える。読む人が多い会社ほど総額が伸びにくい |
| Kibela | 社内wiki型 | ライト1人550円/スタンダード1人880円/エンタープライズ1人1,650円(月額) | コミュニティは5人まで0円 | AI検索とAIエディタはスタンダード以上。無料枠でAIは試せない |
| DocBase | 社内wiki型 | パーソナル550円/スターター3人1,320円/ベーシック10人4,950円/レギュラー30人11,000円(月額) | 30日間の無料トライアル | 人数の枠で階段状に上がる。枠を1人超えた瞬間に価格帯が変わる |
| esa | 社内wiki型 | 1ユーザー1か月につき500円(税込) | チーム作成月から2か月後の月末まで無料 | 書きかけを共有する文化が前提。完成品だけを置く運用には合わない |
| Qiita Team | 社内wiki型 | Personal 500円/Micro(3人まで)1,520円/Small(7人まで)4,900円/Medium(10人まで)7,050円/Large(17人まで)15,300円(月額・税込) | 公式の料金ページに無料プランの記載なし | 人数枠が細かく刻まれる。増員のたびに枠の見直しが要る |
| Stock | 社内wiki型 | ビジネス5 月3,250円(年間一括払い)/エンタープライズ5 月6,000円(年間一括払い)〜/初期費用なし | フリープランは累計20ノート・メンバー数は無制限 | 人数ではなくノート数で上限が来る。20件で運用感を試せる |
| ナレカン | AI検索型 | 要問い合わせ(公式サイトに金額の記載なし) | 無料トライアルあり | 提供は株式会社Stock。自然言語検索・ファイル要約・重複判定を持つ |
| Qast | AI検索型 | 要問い合わせ(利用人数によって変動と記載) | 10名以下はフリープラン(AI機能なし) | 無料枠ではAIが使えない。試すなら有料前提で見積もる |
| Helpfeel | AI検索型 | 要問い合わせ(公式サイトに金額の記載なし) | 公式サイトに記載なし | 社内向けと顧客向けの両対応。検索の当たりやすさに寄せた設計 |
| Guru | AI検索型 | 要問い合わせ(組織の規模に応じた個別見積もり) | 公式サイトに記載なし | 英語圏が主戦場。日本語の社内文書での精度は自社データで確かめる |
| Notion | 汎用ワークスペース型 | フリー0円/プラス1人1,650円/ビジネス1人3,150円(年払い時の月額) | フリープランあり | AIエージェントやAIミーティングノートはビジネス以上 |
| Microsoft 365(SharePoint) | 汎用ワークスペース型 | Business Basic 1人1,049円/Business Standard 1人3,523円(年間サブスクリプションの月額相当) | 公式サイトに記載なし | Copilotは別料金(1人2,698円のプロモーション価格・通常3,148円) |
※本記事の料金はすべて各社公式サイトの記載(2026年7月時点)にもとづきます。プラン改定により変わる場合があるため、検討時は必ず公式サイトで最新の条件をご確認ください。
課金軸が3つに割れていて、単純な安い高いは決まらない
金額の数え方が製品ごとに違うためです。1人あたり課金・人数枠課金・総額固定の3つが混ざり、同じ人数でも順位が入れ替わります。
1人あたり課金はesa・Kibela・Notion・Microsoft 365、人数枠課金はDocBase・Qiita Team・NotePMです。枠課金は、枠を1人超えた瞬間に価格帯が変わります。
NotePMの公式ページには「2026年8月1日から税抜き表示に変更されます」との注記も出ていました。稟議書の金額は、税込と税抜のどちらで拾ったかまで揃えます。
汎用ワークスペース型はNotion AIでマニュアルを作る方法で扱っています。
要問い合わせの4製品は、人数と用途で構成が変わる設計です。自社の人数・利用部署・既存ファイルの置き場所を先に書き出すと、見積もりの精度が上がります。
選定でいちばん効く比較軸5つ

機能一覧はどの製品も似た言葉で埋まります。稟議で説明でき、かつ入れた後に効く軸は、次の5つに絞れます。
軸1:AIの回答に出典が出るか。出ないと現場は使うのをやめる
AIが返した答えが正しいかどうかを、現場の担当者は自分では判断できません。判断できるのは「どの資料を根拠にしたか」が見えるときだけです。
住宅設備の工事会社で、現場から「この型番の給湯器、既存の配管のまま交換できますか」という質問がチャットに飛ぶ場面を考えます。AIが「交換できます」とだけ答えたら、担当者は結局ベテランに電話します。
根拠の施工基準書が1クリックで開けば、その電話が消えます。Saixの社内では回答に出典マニュアルを最大3件つけ、クリックで原典を開ける形にしています。
軸2:課金が人数か枠か。増員のたびに稟議が要る形になっていないか
前章の3つの課金軸を、自社の増員ペースに当てて計算します。半年で3人増える見込みなら、その3人を足した金額まで先に出しておく。枠課金の製品は、枠をまたぐ人数のときだけ急に不利になります。
逆に読む人が編集する人の3倍いる会社なら、編集と閲覧を分けて数える製品が効きます。
軸3:部署ごとに見せる範囲を絞れて、AIの回答にもそれが効くか
見せる範囲を絞れる製品は多い。落とし穴は、権限で隠したはずの資料の中身が、AIの回答経由で出てくることです。権限設定とAIの参照範囲が別々に管理される製品は、社内で最も揉める部分を素通りさせます。

Saixでは部署を5区分で持ち、質問した人の部署で見える資料だけをAIの知識として渡しています。他部署限定の資料は、回答の材料にそもそも入りません。
問い合わせのときは「権限で隠した資料はAIの参照対象からも外れるか」と1行で聞けば、設計が分かれている製品はすぐ判別できます。
軸4:検索の入口が、社員がすでに開いている画面に出るか
新しいツールを1つ増やすことは、社員にとって開くタブが1つ増えることです。ChatやTeamsから直接聞ける導線があるかどうかで、3か月後の利用状況が変わります。導線が別サイトだけの製品は、導入直後の熱が冷めた時点で開かれなくなります。
入口を用意しただけでは、質問は出てきません。何を聞けばいいか分からないからです。私たちは画面に質問例と穴埋めの型を並べました。どこから聞けるかより、最初の一問が出るかを見てください。
軸5:古い記事を見つけて直す仕掛けがあるか
ナレッジは増えるほど劣化します。更新日が古い記事の検知、重複の判定、使われていない記事の抽出。この3つのどれかを持つ製品なら、棚卸しの担当者が「どこから手をつけるか」で悩まずに済みます。
持たない製品を選ぶなら、四半期ごとの棚卸しを人の運用で決めてから契約してください。
ゴール:5つの軸それぞれに自社の条件を1行ずつ書き込み、候補が3製品まで絞れていればOKです
入れても貯まらない3つの原因

導入して半年後に使われなくなる会社には、共通する型があります。製品の性能差で分かれているわけではありません。決めていないことの中身が、どの会社もよく似ています。
原因1:書く人を決めておらず、気づいた人が書く運用になっている
「気づいた人が書く」は、結局誰も書きません。3店舗の調剤薬局で、返品と廃棄のルールが店舗ごとに口伝で回っていた例では、記事を書く担当を各店1名に指名した週から投稿が始まりました。投稿が止まるのは、自分の担当だと思っていないときです。
原因2:探す入口が増えただけで、古い置き場所が生き残っている
新しいツールを入れても、共有ドライブと過去のチャット履歴がそのまま残っていれば、探す場所が3か所に増えます。
部品商社の営業事務で、客先ごとの請求締め日が共有ドライブとチャットの両方にあった例では、ドライブ側を閲覧専用に落として初めて新しい側が使われ始めました。移行とは、古い入口を閉じることです。
古い置き場所は、運用ルールでは閉じられません。私たちは正本を1か所に置いて、目録から外したものはポータル側からも消える形にしました。人が気をつける設計にした時点で、二重管理は残ります。
原因3:直す担当がいないまま、間違った記事が残り続ける
一度でも古い情報に当たった社員は、そのツール全体を信用しなくなります。信頼を決めるのは、正しい記事の数より、間違いに気づいたときに直る速さです。記事ごとに更新責任者を1名だけ置き、その人の名前を記事の先頭に出す。
これだけで放置は目に見えて減ります。
AIへの質問ログは、答えを出すための履歴ではなく、社内のどこが弱いかを示す地図です。
Saixでは質問を8カテゴリに自動分類し、件数が集中したカテゴリを「マニュアルが足りていない領域」として次に作る資料の優先順位に使っています。AIの回答精度より先に見るべきなのは、質問ログをカテゴリ別に取り出せるかどうかです。
すでに導入した会社が何をどう積み上げたかは、AIマニュアルの導入事例でも整理しています。
直す担当を置く前に、直す場所が分かる状態にしてください。私たちはAIの回答に出典のマニュアルを付けています。間違いを見つけた人が、どのファイルを開けばいいか迷わない。これが直る速さです。
Saixが月額上限3,000円で内製している構成

比較の基準点として、製品を契約せずに組んだ場合の実際を出します。Saixの社内ポータルは、AIコーディングエージェントに作らせた内製アプリです。
| 層 | 採用したもの | 選んだ理由 |
|---|---|---|
| 実行基盤 | Cloudflare Workers | サーバーの管理が要らない |
| 画面 | Hono(サーバー側で描画) | 表示が速く、画面側の作りが軽い |
| データ | Cloudflare D1/R2 | 記事本体と添付ファイルを分けて置ける |
| AI | Claude Sonnet 4.6 | 社内資料のダイジェストを直接読ませる |
検索の作りは、ベクトルデータベースを使わないダイジェスト全文投入型です。公開中のマニュアル全件をタイトル・説明・タグ・本文の要点に圧縮してAIに渡し、その圧縮部分にキャッシュを効かせています。
資料が変わらない限り、2問目以降は圧縮済みの部分を読み直さずに済む作りです。

費用は1問ごとに1000分の1円単位で記録し、月3,000円に達した時点で自動停止します。「AIの請求がいくらになるか読めない」という懸念は、上限を先に決めて止める作りにすれば構造的に消えます。
要問い合わせの製品に見積もりを依頼するときも、この上限の考え方が入っているかを聞くと話が早く進みます。
内製が向くのは、社内に手を動かせる人がいて、権限とAIの参照範囲を自分たちで設計したい場合。向かないのは、運用担当が1人もおらず、サポート窓口が要る場合です。分岐点になるのは、直せる人が社内にいるかどうかです。
自社は買うべきか、内製すべきか。30分で線引きします
この記事の5つの軸に御社の人数・部署・既存の置き場所を当てはめ、候補の絞り込みと概算費用まで一緒に整理します。オンラインで無料、その場で持ち帰れる形にしてお渡しします。
よくある質問
Q. 社内規程や顧客情報を入れて、AIの学習に使われる心配はないか
入力内容をAIの学習に使わないと明記している製品を選べば、この点は避けられます。確認するのは、学習利用の可否・保存される場所・退会時のデータ削除の3つ。あわせて、部署の権限設定がAIの参照範囲まで効くかを必ず問い合わせてください。
権限とAIが別管理の製品は、隠したはずの資料が回答に出ます。
Q. 何名くらいの規模から、有料のツールを入れる意味が出るか
人数ではなく、探す対象の件数で決まります。目安は、社内に散らばる文書が数百件を超え、同じ質問が週に何度も出ている状態。10名以下でもこの状態なら効きますし、50名でも文書が数十件なら共有ドライブの整理が先です。
無料プランで20件ほど入れて、検索して見つかるかを試すのが最短の判定になります。
Q. 無料プランだけで運用を続けられるか
試用としては十分ですが、AI機能は多くの製品で有料側に置かれています。今回確認した範囲では、Kibelaは無料のコミュニティにAI機能がなく、Qastもフリープランには含まれません。
無料で判定できるのは「社内が書いてくれるか」まで。判定には2週間から1か月ほど見ておくと確かです。AIの当たり具合を見る段階で有料へ切り替える前提になります。
まとめ
ナレッジ共有ツールは、貯めて探すための道具です。作る側のマニュアル作成ツールとは守備範囲が違い、1つで兼ねると両方が薄くなります。まず社内で「作る場所」と「貯める場所」を分けるかどうかを決めてから、製品名の話に入ってください。
料金は12製品のうち8製品が公式に公開しており、残る4製品は要問い合わせでした。数字が並んでいても、1人あたり課金・人数枠課金・総額固定という3つの数え方が混ざっています。
自社の人数と半年後の増員を当てて計算し直さない限り、安い高いは決まりません。
そして入れた後に効くのは、AIの回答に出典が出るか、権限がAIの参照範囲まで貫通するか、書く人と直す人が決まっているか。ここまで決めたうえで、次は貯めた情報を実際のマニュアルへ落とす工程に進みます。
候補を絞る段階ならマニュアル作成AIツール比較を先に読み、内製と外部製品の線引きで迷うならAIマニュアル構築支援で御社の条件に当てはめて整理できます。
結論:ナレッジ共有ツールの選定は、AIの賢さ比べではなく、出典が出るか・権限が貫通するか・書く人が決まっているかの3点で決まります。
- 役割を分ける:作る道具と貯める道具は別。1製品で兼ねると手順書も日々のメモも薄くなる
- 料金は数え方から揃える:公式に金額を出しているのは12製品中8製品。1人あたり・人数枠・総額固定の3軸が混在している
- 出典表示を最優先で見る:根拠の資料が1クリックで開けない回答は、現場でベテランへの電話に戻る
- 上限を先に決める:AI費用は上限額で自動停止させる設計にすれば、請求が読めない不安は構造的に消える




