「手順書の雛形、ありますか」。総務に聞くと、共有ドライブのURLが返ってきます。開くと、項目名だけが並んだ空のファイルです。何をどこまで書けばいいのか分からず、その日は閉じて終わります。
雛形が無いのではありません。埋め方が書かれていないだけです。
手順書のテンプレートでつまずくのは、たいてい次の3点です。
- ネットで拾った雛形が自社の作業に合わず、欄が半分空く
- 空欄を前に何を書けばいいか分からず、1本目の途中で止まる
- 配ったのに誰も書かず、結局いつもの一人が全部書いている
この記事では、手順書の雛形そのものを渡します。次のことに答えます。
- 手順書の6要素と、そのままコピーして使える基本の雛形
- 用途別の雛形3種(定型作業・判断が絡む作業・緊急対応)
- 空欄をAIに埋めさせる3ステップと、コピペできる指示文
- 雛形を配っても書かれないときの、直し方3つ
Saix自身、社内マニュアル67本をAI(Claude Code)で生成しています。社内ポータル「Saixマニュアルブック」に集約し、雛形も同じ棚に置いています。
作り手であり運用者でもある立場から、机上論ではなく手を動かす前提で書きます。
手順書の雛形は、欄を増やすほど書かれなくなります。必要な要素は6つで足ります。雛形と一緒に配るべきなのは記入例で、空欄の説明ではありません。埋める作業はAIに任せ、人が書くのは判断基準とNG動作の2欄だけにします。
手順書の作り方そのものを順を追って知りたい方は、次の記事が参考になります。

監修者
株式会社Saix 代表取締役
東証プライム上場企業含む100社以上のAI導入支援|リクルートでのAI推進・新卒マニュアル制作経験を経て、Webサイト「AIマニュアル研究所」を運営|YouTubeメディア「かいちのAI大学」4.8万人。
手順書の雛形に必要な欄は6つ|公的な様式も3列に絞っている

手順書の雛形に入れる欄は6つです。目的、前提条件、手順、判断基準、NG動作、連絡先。この6つが埋まっていれば、書き手が誰であっても手順書として機能します。
| 欄 | 書く内容 | 埋める人 |
|---|---|---|
| 目的 | この作業が何のためにあるか | AIの下書きで足りる |
| 前提条件 | 必要な権限・道具・実施タイミング | AIの下書き+人が補う |
| 手順 | 操作を番号付きで1動作ずつ | AIの下書きで足りる |
| 判断基準 | 分岐したときにどちらを選ぶか | 人が書く |
| NG動作 | やってはいけないことと理由 | 人が書く |
| 連絡先 | 判断できないときの相談先 | 人が書く |
欄をこれ以上増やさないでください。雛形の欄数と、書き上がる本数は反比例します。
公的な様式も同じ考え方です。厚生労働省が公開している「作業手順書作成要領及び事例」の様式を実際に開いて確認しました(2026年7月時点)。
本表の列は「作業手順」「急所」「備考」の3列だけでした。急所の欄が、本記事でいう判断基準とNG動作に当たります。公的な様式ですら、埋める欄は3列に絞られています。
同じ資料には、作成の進め方も6段階で示されています。作業構成の認識、作業分解、原案の作成、決定、実施、維持の順です。
注目すべきは最後の「維持」です。作って配って終わりではなく、維持まで工程に入っています。更新の欄を雛形に入れておくのは、この考え方に沿っています。
そのまま使える基本の雛形|コピーして角かっこを差し替える

基本の雛形です。そのままコピーして、角かっこの中身を自社の情報に差し替えて使います。
# [作業名]手順書
■ 目的
・この作業は[何のため]に行う
・これをしないと[何が起きるか]
■ 前提条件
・実施者:[役割・資格]
・必要な権限/道具:[アカウント・工具・資材]
・実施タイミング:[いつ・頻度]
・所要時間の目安:[分]
■ 手順
1. [1動作] → 完了の判定:[どうなれば完了か]
2. [1動作] → 完了の判定:[どうなれば完了か]
3. [1動作] → 完了の判定:[どうなれば完了か]
■ 判断基準(迷ったときの分かれ道)
・[どんな状況か]のときは → [どちらを選ぶか]
・判断がつかない場合は → [誰に確認するか]
■ NG動作(やってはいけないこと)
・[してはいけない操作]:[なぜダメか]
■ 連絡先
・通常の相談先:[部署・役割]
・緊急時:[部署・役割]
■ 更新
・作成日/最終更新日:[日付] ・担当:[役割]
使い方のこつが2つあります。1つ目は、判断基準を巻末にまとめないことです。
迷った人は巻末までたどり着きません。分岐が起きる手順の直下に、その場で埋め込みます。
2つ目は、記入例を1本作ってから配ることです。空の雛形だけを配ると、書き出しで全員が止まります。社内で1本だけ完成品を作り、それを見本として雛形に添えてください。
ファイル形式も先に1つ決めます。テキスト、表計算、ドキュメントのどれでも構いません。形式が3つに分かれた瞬間、検索も更新もできなくなります。
表計算で作ると印刷はきれいですが、スマホでは読めません。現場で開く前提なら、見出しと箇条書きだけのドキュメント形式が扱いやすくなります。
1本の分量にも上限を置きます。手順が20を超えたら、それは1本ではなく2本に分けるべき作業です。分けると更新も軽くなります。
更新の欄を最後に置いているのは、書く優先度が低いからではありません。日付と担当が空のままの手順書は、半年後に「これは今も有効か」が誰にも判断できなくなります。1行で構わないので、配る前に必ず埋めてください。
用途別の雛形は3種|定型作業・判断が絡む作業・緊急対応

基本の雛形は6欄で共通です。ただし作業の性質によって、厚くする欄が変わります。全部を同じ濃さで書こうとすると、書き手が息切れします。
用途別に分けるのは3種までです。雛形の種類が増えるほど、書き始める前に選ぶ時間が生まれます。次の表で、自分の作業がどれに当たるかを先に決めてください。決まれば、書く欄はおのずと絞られます。
| 種類 | 厚くする欄 | 薄くてよい欄 | 向いている作業の例 |
|---|---|---|---|
| 定型作業 | 手順・完了の判定 | 判断基準 | 月次の請求書発行、備品の発注 |
| 判断が絡む作業 | 判断基準・NG動作 | 手順 | 与信の確認、クレームの一次対応 |
| 緊急対応 | 連絡先・最初の3手 | 目的 | システム障害、設備の停止 |
1 定型作業:手順と判定を細かく、判断基準は薄くする
毎回同じ結果になる作業です。迷いどころが少ないぶん、手順の粒度で品質が決まります。
# [作業名]手順書(定型作業)
■ 目的/■ 前提条件(基本の雛形と同じ)
■ 手順(1動作=1行・判定を必ず付ける)
1. [操作]→ 判定:[画面表示・現物の状態]
2. [操作]→ 判定:[画面表示・現物の状態]
■ 完了チェック(最後に確認する3点)
□[確認項目]/□[確認項目]/□[確認項目]
■ NG動作/■ 連絡先(基本の雛形と同じ)
末尾のチェック欄が効きます。3点だけに絞ると、実際にチェックされます。10点並べた瞬間、全部に印が付いて意味を失います。
選ぶ3点は、間違えたときに後戻りが効かない項目にします。送信済みのメール、確定した伝票、廃棄した現物。やり直せる作業をチェック欄に入れても、事故は防げません。
備品の発注でいえば、確認すべきは「型番」「数量」「納品先」の3つです。金額や色は後から直せます。
2 判断が絡む作業:手順より分岐を先に書く
同じ作業でも、状況によって進み方が変わるものです。手順を細かく書いても現場は止まります。
# [作業名]手順書(判断が絡む作業)
■ 目的/■ 前提条件(基本の雛形と同じ)
■ 判断基準(先に置く)
・[状況A]のとき → [対応A]/理由:[なぜ]
・[状況B]のとき → [対応B]/理由:[なぜ]
・どちらとも言えないとき → [誰に確認するか]
■ 手順(分岐後の共通作業)
1. [1動作]→ 判定:[どうなれば完了か]
■ NG動作
・[独断で進めてはいけない範囲]:[理由]
■ 連絡先(判断を仰ぐ先を明記)
理由の欄を必ず残してください。理由が書いてあれば、想定外の状況でも本人が近い判断を選べます。
分岐の数は3つまでに抑えます。4つ以上並ぶと、読む側は選ぶこと自体をあきらめて担当者に電話します。
「どちらとも言えないとき」の行を必ず入れるのも、そのためです。迷った人の行き先が書いてあれば、作業は止まりません。
歯科医院の器具の滅菌でいえば、手順そのものは3行で終わります。現場が止まるのは、器具に汚れが固着していたときです。分岐と理由が書かれていれば、初日の人でも手が動きます。
3 緊急対応:最初の3手と連絡先だけを1画面に収める
障害や事故の対応では、読む余裕がありません。目的の説明は要りません。
# [事象名]緊急対応手順
■ まず3手(この順に実行)
1. [止める・切り離す]
2. [報告する:誰に・何を]
3. [記録する:時刻・症状]
■ 連絡先(時間帯別)
・平日日中:[役割・連絡手段]
・夜間休日:[役割・連絡手段]
・[外部業者・ベンダー]:[連絡手段]
■ やってはいけないこと
・[復旧を独断で試みる範囲]:[理由]
■ 収束後にやること
・[報告書の提出先・期限]
緊急対応の雛形は、印刷して貼れる1枚に収めます。探して開く必要がある緊急手順書は、緊急時に使われません。
連絡先を時間帯で分けているのにも理由があります。障害の多くは、担当者がいない時間に起きるからです。
金属加工の現場を持つ製造業で、夜勤中に設備が停止した例があります。手順書に載っていたのは日中の内線番号だけでした。連絡先が1つしか書かれていない手順書は、半分の時間帯で役に立ちません。
3種の使い分けで迷ったら、その作業で誰かが止まる場面を思い浮かべてください。手が止まるなら定型作業、迷って止まるなら判断が絡む作業、時間との勝負なら緊急対応の型です。
雛形をAIで埋める3ステップ|人が書くのは判断基準とNG動作だけ

空欄を前に固まる時間を無くします。埋める作業はAIに任せられます。人が向き合うのは、AIが埋められない2欄だけです。
STEP1:作業しながら口で説明して、素材を取る
何をその作業を実際にやっている人に、手を動かしながら説明してもらいます。
どうやってスマホの録音機能で十分です。整った説明を求めず、順不同のままで構いません。文章に直す作業を人が先にやると、そこで力尽きます。
ゴール:1作業ぶんの口述メモか文字起こしが手元にあればOKです
STEP2:雛形と素材を一緒に渡して、AIに整形させる
何を上の雛形と口述メモを両方貼り付け、型に沿って整形させます。
どうやって下のプロンプト(=AIへの指示文)を使います。プロンプトとは、AIに「こう作ってほしい」と伝える指示の文章のことです。
手順書の編集者として作業してください。
下の【雛形】の形式に沿って、【素材】を整形してください。
【雛形】
<この記事の基本の雛形をそのまま貼る>
【素材】
<口述メモ・文字起こしをそのまま貼る。順不同でよい>
【出力の条件】
・手順は1行1動作にする。2つの操作を1文に混ぜない
・各手順に「完了の判定」を1行付ける
・素材に無い情報は創作せず、空欄のまま[要確認]と書く
・判断基準とNG動作は、素材に明言がある場合だけ書く
・最後に「人に確認すべき項目」を箇条書きで出す
4行目が要点です。AIは足りない情報を、それらしい文章で埋めてしまいます。空欄のまま残させると、聞くべきことがそのまま質問リストになります。
ゴール:6欄が埋まった下書きと、[要確認]の一覧があればOKです
STEP3:判断基準とNG動作を、人が書き足す
何をAIが空欄にした2欄を、経験者に聞いて埋めます。
どうやって「間違いを直してください」と頼むと、赤字は返ってきません。「この手順どおりにやったら、どこで失敗しますか」と聞きます。失敗の予測は、経験者ほど具体的に答えられます。
返ってきた内容は、AIに渡して該当の欄へ反映させます。人が清書する工程は挟みません。
判断基準とNG動作を人が担当する理由は、責任の所在にあります。間違えたときに損害が出る判断は、AIの推測で埋めてはいけません。
この2欄さえ人が押さえていれば、残りの4欄はAIの下書きで実用に足ります。1本目は半日、2本目以降は1〜2時間で形になります。
ゴール:[要確認]が消え、判断基準とNG動作が1行以上埋まっていればOKです
Saixの実運用|雛形も完成品も同じ本棚に置く

Saixでは、社内マニュアル67本を1つのポータルに集約しています。雛形も、完成した手順書と同じ棚に置いています。
雛形を別の場所にしまわない理由は単純です。書き始める人は、完成品の隣にある雛形しか使いません。
正本はローカルの管理フォルダに置き、目録ファイルからポータルへ一方向で同期しています。編集する場所と読む場所を分けると、最新版がどれか分からない状態が起きません。
社員が書き方で詰まったときの動線も、探すではなく聞くに寄せています。AIヘルプデスクに質問すると、社内資料だけを根拠にした回答と、出典のマニュアル最大3件が返ります。
質問のログも捨てずに使っています。同じ欄について質問が続いたら、直すのは書き手ではなく雛形の側です。
探す時間が「人に聞く」から「AIに聞く」に置き換わったのが、いちばん大きな変化です。手元の資料をそのまま自動回答につなげる手順は社内FAQをAIで作る方法で扱っています。
雛形を配っても書かれない3つの原因|止まるのは意欲ではなく最初の1行

雛形を配ったのに1本も戻ってこない。よくある結末です。原因は書き手の意欲ではありません。3つに整理できます。
原因1:記入例が無く、書き出しの1行で止まる
空の雛形は、白紙より重く感じます。書く分量も、粒度も分からないからです。
直し方は1つです。誰か1人が1本だけ完成品を作り、それを雛形に添えて配ります。見本が1本あると、2本目以降は自走します。
原因2:白紙から書かせていて、AIを使う入口が示されていない
雛形だけ渡して「埋めておいて」と言うと、書き手は文章を考える作業を背負います。ここが重いのです。
雛形と一緒に、STEP2の指示文もセットで配ってください。口述メモを貼れば下書きが出る形にすると、書き手の作業は確認と補足に変わります。
原因3:提出先と期限が無く、書いても行き場が無い
「余裕があるときに書いてください」と伝えた手順書は、まず書かれません。誰にいつまでに出すかが決まっていないからです。
提出先を1人に決め、期限を2週間以内で切ります。提出された手順書は、内容の良し悪しより先に受け取ったことを返してください。
建設現場の施工管理でも、書いた手順書に反応が無かった月から提出が止まった例があります。書く側は、読まれたかどうかを見ています。
雛形を全社に一斉配布する運用は、たいてい失敗します。配る範囲が広いほど、書かない人が多数派になり、書かないことが普通になるからです。まず3人に配り、3本そろえてから広げてください。先に完成品が3本ある状態で配ると、雛形は指示書ではなく見本として受け取られます。
作業の棚卸しから進めたい場合はAIで属人化を解消する方法が近い話になります。業種ごとの型を探している場合は、AIマニュアルテンプレート|業界別の雛形とAIで埋める手順にまとまっています。
御社の作業に合わせて、手順書の雛形と1本目の見本を一緒に作ります
どの作業から着手するか、6欄のどこを厚くするか、誰に配って誰が受け取るかは、業種と人数で変わります。Saixが社内で回している本棚と雛形の実物をお見せしながら、1本目の設計を一緒に描きます。オンラインで、費用はかかりません。
よくある質問
Q. 作業の中身をAIに渡して、情報が漏れないか不安です
渡す素材の側を絞れば、仕組みとして防げます。顧客名・金額・個人情報は、口述メモの時点で役割の呼び名に置き換えてください。加えて、入力内容を学習に使わない設定になっているかを、利用中のサービスの公式ページで確認します。渡すものを選ぶ運用が、規約の確認より先に来ます。
Q. 雛形は何種類まで用意すべきですか
3種類で止めてください。定型作業、判断が絡む作業、緊急対応。この3つで社内の作業はほぼ収まります。部署ごとに雛形を作り始めると、どれを使うかを選ぶ時間が発生し、書き出しがまた遅れます。迷ったら定型作業の雛形から書き始めて構いません。書きながら分岐が増えたら、判断が絡む作業の型へ差し替えます。
Q. 無料のAIだけで雛形は埋められますか
口述メモから6欄の下書きを作るところまでは、無料の生成AIで届きます。届かないのは、誰がどこまで書いたかの管理と、更新履歴の記録です。ここは共有ドキュメントでの手管理か、社内ポータルの仕組みが要ります。埋める工程と回す工程を分けて考えてください。
まとめ
手順書の雛形に必要な欄は6つです。目的、前提条件、手順、判断基準、NG動作、連絡先。欄を増やすほど、書き上がる本数は減ります。厚労省が公開している作業手順書の様式も、本表は3列に絞られていました。
用途別の型は3種で足ります。定型作業は手順と判定を厚く。判断が絡む作業は分岐を先に置く。緊急対応は最初の3手と連絡先だけを1画面に収める。全部を同じ濃さで書こうとすると、1本目の途中で止まります。
埋める作業はAIに任せます。作業しながら口で説明して素材を取り、雛形と一緒に渡して整形させ、判断基準とNG動作だけを人が足す。配るときは、空の雛形ではなく完成した見本を1本添えてください。
次の一手は、質問がいちばん多い作業を1つ選び、その作業を口述で録音することです。作り方の詳細と5ステップの進め方は手順書をAIで作成する方法にまとめています。正本づくりから定着の運用まで整えたい場合は、AIマニュアル構築支援で実際の形をご覧ください。
結論:手順書の雛形は6欄で足ります。書かれない原因は書き手の意欲ではなく、記入例と提出先が無いことです。
- 基本の雛形は6欄:目的・前提条件・手順・判断基準・NG動作・連絡先。欄を増やすほど書かれない
- 用途別は3種:定型作業は手順と判定、判断が絡む作業は分岐、緊急対応は3手と連絡先を厚くする
- AIが埋めるのは4欄:人が書くのは判断基準とNG動作の2欄だけ
- 素材は口述で取る:文章に直す作業を人が先にやると、そこで力尽きる
- 配るときは見本を添える:空の雛形だけを配ると、全員が最初の1行で止まる




